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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

何メートルいや何十メートル潜るのか見当もつきませんが、今はそんなことを言っている場合ではありません。

「一緒に行きましょうよ、お兄様」

「危いぜ、燿ちゃん、僕が瀬ぶみして帰って来るまで、ここで待っていたらどう?」

「だって、ここに長くいられないのは判っているし、お兄様一人行って駄目な位なら、ここに残っている私達だって助かりようは無いじゃありませんか、ね綾子さん」

「ええ」

それは本当に燿子の言う通りでした。健一一人行って帰って来られる位なら、三人でも行けないことは無いでしょうし、健一だけでも脱け出せないものなら、三人は死ぬより外に道もありません。

「よし、その気なら一緒に行こう、出来るだけのことはやって見るが、僕の働きを邪魔しないようにしてくれ、生きるも、死ぬも一緒だ」

「お兄様」

「燿ちゃんは左から、綾子さんは右から、僕のバンドを掴むのだ、手を離してはならぬぞ、――そして出来るだけ底を潜るんだ、水は隧道の天井へすれすれになっているから、天井に吸いつけられると大変だぞ」

「大丈夫よ、お兄様」

「よし、それでは潜るぞ」

水の選手翠川健一は、二人の少女を腰にブラ下げて、渦巻く水の中に、魚のように潜りました。