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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

「これは大したものだ、学者に見せたらどんなに喜ぶか判らない、立花博士が夢中になって発掘したわけだ」

翠川健太郎は感慨深く言います。

「金は、金は?」

まだうろうろする唐崎荘之介。

「金は働いて生み出すものですよ、額に汗して得た金が本当の金だ、――海の底や土の中に、金があると思うのが間違の種だ」

「…………」

翠川健太郎は健一や燿子や綾子の方へ向いて続けました。

「これは金よりも貴い物だ、博物館か帝大へ寄付するようにしよう、今までの費用は私が全部持つ、綾子さんは今日から燿子と姉妹になるのだ、それでいいでしょう? ――海の底や、土の中に金があると思って、争い合ったり殺し合ったりするのが間違だ、立花博士は金のあることなどは考えてもいなかったに相違ない、世間が金を掘り出すものと思い込んで騒いだのだ、学者は金よりもこの古文書や古写経や、ボロボロの道具をどんなに貴いと思うか判らない」

翠川健太郎がこう言っているうち、唐崎荘之介はいたたまらなくなってコソコソと逃出し、燿子と綾子は、抱き合って嬉し泣きに泣いておりました。

八百年にして世に出た、大宮殿を照らす真夏の白日、それは何と言う明るさでしょう。