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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
「貴方は、どなたです」
警官が二人、扉の左右から行手を阻みました。
「いや、これは失礼、ツイ興奮したもので、――私は唐崎荘之介という、亡くなった立花博士の平泉館発掘事業の資金を半分投資した者じゃが」
「あの、唐崎商事の」
「左様」
唐崎商事の社長――と言えば実業界ではかなり知られた人物です。四十五、六の少し古風な頬髭を持った、堂々たる風采が、なんとなくあたりを圧するのも無理のないことでした。
「あっ、唐崎さん」
と飛んで出た滝山助手。
「記録はどうした、滝山君」
「盗まれました」
「な、何? 盗まれた。銅板は紛失し、立花博士は死に、その上記録を盗まれては、発掘事業は全く絶望ではないか、いよいよ未決で死んだ立花博士の大詐欺を裏書するようなものだ――それもいいが、一体私の損害をどうしてくれるんだ」
「…………」
「記録の複写はないのか、滝山君」
「ありませんよ」
「それほどの大事な記録の複写を取って置かないというのは君の手ぬかりじゃないか」
「いえ、盗まれる危険を少くする為に博士は複写を作らせなかったんです」
「記録の内容を、すっかり頭に入れて置いた博士はそれでよかったろうが、我々は困る。