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りゅうけつせんにしへいく
流血船西へ行く
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1938(昭和13)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,026 字 · 19 页
「なに? どうするって※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「直ぐ流血船へ踏込むんです、謎は解けました。憎むべき殺人鬼、海坊主の仮面をひん剥いてみせます、流血船のトリックを発いてやるんです。急いで下さい!」
「本当か、大丈夫か※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「瓦斯弾を用意して、早く、直ぐです」
船長は伊藤の手腕を信じていた。――時を移さず瓦斯弾を積込み、決死の同志十名と共に、短艇は波を蹴って流血船へ向った。
同じ梯子から猿のように、甲板へ上るとそのまま、伊藤次郎は先へ立って、ずんずん船底まで下りて行った。其処は塗料の腐る匂いで息が詰りそうである――然し伊藤次郎は、懐中電灯を差しつけながら、散らばっている船具や板片を掻退け蹴飛ばし、塵も見逃すまじと船底の鉄板を検べ廻った。
「どうするんだ」
船長は不服そうに、「此処は船底だぞ、その鉄板のもう一重下は海だぞ」「そうでしょうか……」と落着いた声で答えた時、伊藤青年は思わず占めた! と叫び、
「瓦斯弾の用意」と振返った、「僕が今此処を明けるから構わず中へ瓦斯弾を叩き込んで呉れ」
「鼠でも追出そうと云うのか」
「そう、巨きな鼠が出て来ますぜ、――そらッ」