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りゅうけつせんにしへいく
流血船西へ行く
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1938(昭和13)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,026 字 · 19 页
「P・F号の無電に依ると、流血船の位置は領海へ迫ること三百浬ですよ船長、そこに何か惨劇があったとすれば、救護に行くのは我々の任務ではないでしょうか」
「ふうむ、――領海から三百浬か、……」
船長は眤と伊藤の眼を覓めた。伊藤青年は力に溢れた微笑を見せている。――如何にもさあ行きましょうと云いたそうだ。
「貴様に計られたな」
船長はやがて呶鳴るように云った。
「宜し、臆病者と云われては俺の名が廃る。出掛けよう」
「しめたッ」
「直ぐ無電で横浜の本部へ報告しろ、領海附近に漂流船あり、救護のため進路を変更す、と云うんだ、流血船の事には触れるな」
「畏りました、船長」
伊藤次郎は活溌に答えて踵を返した。
彼は得意であった。なにしろこの半年以来ずっと好奇心の的だった「流血船」を、愈々探険する運びになったのだ。――実を云うと、同じ救護船浦島丸の無電技師で川本順吉という友達と、何方が先に流血船の真相探険をするか、もう五週間も前から賭けをしていた。そのうえ当の浦島丸はいま、北部沿海に出動しているので、P・F号の無電は此方と同様に聴いた筈である。だから賭けをした手前にも、浦島丸に先立って流血船探険を決行する必要があったのだ。