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はいかぐら

灰神楽

江戸川 乱歩

「大衆文藝」1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,262 字 · 27 页

青空文庫

「おかしいな」と思いながら待っている目の前に、先ず刑事らしい男の顔が現れ、そのうしろから、意外にも奥村二郎の顔がひょいと覗いた。

「さては、先生もうあの事を警察に知らせたのだな」

庄太郎はふとほほえみ相になったのを、やっと堪えた。

だが、あれは一体何者であろう。二郎の次に現れた、商人体の男は。庄太郎はその男をどっかで見た様な気がした。併し、いくら考えて見ても、どうした知合いであるか、少しも思い出せないのだ。

「君が河合庄太郎か」刑事が横柄な調子で云った「オイ、番頭さん、この人だろうね」

すると、番頭さんと呼ばれた商人体の男は即座にうなずいて見せて、

「エエ、間違いございません」

というのだ。それを聞くと、庄太郎はハッとして思わず立ち上った。彼には一瞬間に一切の事情が分った。最早や運のつきなのだ。それにしても、どうしてこうも手早く、彼の計画が破れたのであろう。二郎がそれを見破ろうとはどうしても考えられない。彼はボールを打った本人である。時間も一致すれば、お誂え向きに障子が開いていたばかりか、鉄瓶さえ覆っていたのだ。この真に迫ったトリックを、どうして彼が気附くものか。