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はいかぐら

灰神楽

江戸川 乱歩

「大衆文藝」1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,262 字 · 27 页

青空文庫

それはきっと、何か庄太郎自身に、錯誤があったものに相違ない。だが、それは一体どの様な錯誤であったろう。

「君は実際ひどい男だね。僕はうっかりだまされて了う所だった」二郎が腹立たしげに怒鳴った「だが気の毒だけれど、君はあんな小刀細工をやったばかりに、もう動きのとれない証拠を作って了ったのだよ。あの時には、僕も気がつかなかったけれど、あすこにあった火鉢は、あれは兄が殺された時に同じ場所に置いてあったのとは、別の火鉢なのだよ。君は灰神楽のことをやかましく云っていたが、どうしてそこへ気附かなかったのだろうね。これが天罰というものだよ。灰神楽の為に灰がすっかり固って了って、使えなくなったものだから、婆やが別の新しい火鉢と取り替えて置いたのだよ。それは灰を入れてから一度も使わぬ分だから、ボールなんぞ落ち込む道理がないのだ。君は僕の家に同じ桐の火鉢が一つしかないとでも思っているのかい。昨夜始めてそのことが分った。僕は君の悪企みにほとほと感心して了ったよ。よくもあんな空事を考え出したもんだね。僕はその当時あの部屋になかった火鉢にボールが落ちているとはおかしいと思って、よく考えて見ると、どうも君の話し方に腑に落ちない所がある。