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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
主人は頭を角刈りにした痩せた男で、あまり表情を動かさない。あとで城介に聞くと、葬儀屋というのは喜怒哀楽を顔に出してはいけない、無表情で事を運べと、かねて注意されているという。主人のむっつりした態度は、その職業的習練が日常にまで移行したもののようである。栄介は金を借りに、両三度行ったことがある。
なにしろ幸太郎からの学資の額がすくなかったのだ。田舎の高等学校並みにしか送って来ないので、とても足りない。アルバイトもやったが、それでも不足すると、葬儀屋にたよる他はなかった。
主人は栄介の希望する額を聞くと、若い美しい女房に金を持って来させ、黙って彼に手渡した。
日々困っているから、その金がどうしても戻せない。やがて彼は葬儀屋へ行きづらくなった。
「兄貴。少しずつでも返して、また借りに来ればいいじゃないか」
時々城介は彼に言った。
「おやじが来客に、これはよく働くが、兄の方はだらしないと話しているのを聞くと、おれはちょっとつらいんだ」
栄介だってつらかった。卒業してから返すなどと、当てもないようなことを言える義理ではなかった。その中に城介が出征してしまったから、その借金は返さずじまいになった。