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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

(しかしあの時――)

と栄介はちらと考えた。

(おれたちは竜介の死顔を見せてもらえなかった。幼ないおれたちにショックを与えたくなかったのか、それとも――)

自殺であったなら、その事実を誰が城介に教えたのか。しかも縊死の状況まで詳しく。そしてなぜ城介はそのことを、栄介に教えて呉れなかったのか。栄介は瞬間的に昏迷を感じながら言った。

「そりゃきっと城介のつくり話だよ。あいつは時々人をかついで、喜んでいたからね」

「そうかね」

加納はさりげなく答えた。揚がったハゼを皿に移しながら、話題を変えた。

「でも、城介君は怒っていたね。教育終了と共に帰す約束なのに、蒙古くんだりまで追いやるとは、ひでえぺてんだってね。彼も白紙答案の組なんですよ。白紙で合格とは、わたしも無茶だと思う。城介君は喘息のせいもあって、早く帰還したがっていたよ」

「厚和の生活は、つらかったのかね?」

「いや。楽だった。もう初年兵じゃなくて下士官だからね。大同から汽車に乗って、万里の長城を出る。長城を出たからって、そう風物が一変するわけじゃない。遊牧民族のパオなんかがあって、それが珍しかったくらいなもんです」