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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

とにかく大戦争になったから、一所懸命に自分の任務を尽せという、かんたんな訓示でしたよ」

しかし加納は自分の転属が、その大きな戦争に関係があることを、直感した。それは召集が長引くということに直結していた。彼はすぐに私物を整理して、迎えを待った。山また山の奥の分屯隊だから、一人で歩いて行くわけには行かない。とうとう迎えが来た。

「それもトラックじゃなく、乗用車が一台、わざわざわたしのために、三日がかりでやって来たね。びっくりしましたよ。聞くと聯隊本部からの命令だと言う」

「乗用車というと、将校待遇だね」

「まあそうですよ。その時てっきり南方行きの要員だと思った。大きな戦争になると、こりゃ単に守備と違って、衛生の方が忙しくなるからねえ」

鬚面の分隊長や戦友たちと別れを告げ、乗用車は一路厚和に向う。そこにはすでに独立歩兵第十二聯隊付衛生下士官の矢木城介軍曹らも、ごっそり転属を命じられて集結していた。

「やあ。また一緒になったな」

城介は掌を上げて加納に言った。

「到着はお前がビリだぞ。今晩はおれんとこで泊れや」

「そうかい。そう願うか」

宿舎は民家で、下士官ともなれば、割振りは自由である。