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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

付添って来た学生が言った。

「もっと陰湿なものだと僕は思っていた」

それは栄介も感じている。明るい日射しの中で編み物をしている女。笑い声を立てながら手押車を自分で操縦して出て行く少年。おおむねからっとした雰囲気に染められていた。

「内臓じゃなく、骨だからだよ」

栄介は講義の口調で、語呂合わせにもならないことを言った。

「骨だから、乾いているのだ」

やがて名が呼ばれ、彼だけが診察室に入った。六十ぐらいの老女が、ぎくしゃくと着物を着ようとして、いっこうに動作がはかどらなかった。老女はおかしそうに、彼に笑いかけながら言った。

「右手が上らないんでね。苦労しますよ」

紹介状の宛名は医長になっていた。医長だけが肱掛椅子に腰をおろし、若いインターンや女医や看護婦は立ったり、うろうろと歩いたりしていた。紹介状には所見がくわしく書いてあるらしく、読み終えるのにちょっと時間がかかった。それから彼は裸にされ、材木のように診察台に横たわった。次に立たされて、精密な調べを受け、また診察台に戻った。れいのコブに興味があるらしく、インターンや女医が次々近づいて来て、押したりつまんだりした。