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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

その癖のある尻上りの文字が、突然彼の癇にさわった。彼はそれを引っぱり出して、いきなり二つに破ろうとした。しかし厚過ぎて、ただねじれただけで、破れなかったのだ。彼はいらだって巻紙を引き出し、丸めて火鉢に放り込み、ライターで火をつけた。空気が乾いていたせいか火つきがよく、ぼうぼうと焔を上げて燃え、またたく間にあらかた燃え尽きた。わずかに残ってじりじり移動する火の粉に、彼は水差しの水をそそぎ、そのまま寝床にもぐり込んだ。何故そのことを今まで忘れていたのだろう。一月三日の日に思い出さなかったんだろう。

「おれも少しぼけて来たのか」

絵ハガキをこなごなに引裂きながら、彼は思った。しかしまだぼける年齢ではなかった。彼の意識が幸太郎を追い出そうとしたのと同時に、手紙を焼いた記憶をも排出したのだろう。彼は引裂いたハガキを、窓をあけてぱっと外に散らした。

電報が来た。栄介は赤電話で神田の画廊を呼び出した。四郎が出て来た。

「明日午後一時の汽車で、東京駅に着くというんだよ」

「誰が?」

「誰がじゃないよ。幸伯父だ。ムカエタノムと書いてある。お前、行くか?」

「イヤだね。行かないよ。