轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
そのひときわ高い山を、青年が指差した。
「あれは高尾山です」
欅並木の尽きるところに、白い正門があった。車はその脇で停った。私たちは各々扉をあけて降り立った。青年だけは座席にとどまった。
「すこしくたびれたんで、ここで待っています」
青年は白い清潔な歯並みを見せて笑った。
「それに僕は御陵なんかには、あまり興味がないんです」
幸太郎が先に正門を入った。栄介はわざと遅れるために、入口の事務所の前に佇ち、その前に生えた木を見上げていた。私も栄介に従った。
「これ、スモモだね。珍しいな」
栄介は私に言った。スモモはまだ花をつけていなかった。
「城介の手紙にもあったが、あちらにはこの木が多いらしい。実は桃よりも小さくて、酸っぱいそうだ」
十間ほど入ったところから、幸太郎が振返った。栄介がのろのろしているのを認めると、くるりと顔を戻して、ひとりで歩き出した。その背の形や足の動かし方は、栄介のそれにそっくりであった。老人の背はすべてを拒否し、背中全体で怒っているように見えた。広い参道の両側はぎっしりと杉の並木でおおわれている。斜めにさす日光が、その杉のてっぺんで淡く煙っていた。