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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

柵があって丘には登れない。そこらには赤松がたくさん生え、松ぼっくりをつけていた。前面は玉砂利の広場になっていて、白い風がそこをしきりに吹き抜けた。陵は円形でたくさんの丸い黒っぽい石でおおわれている。菓子の鹿の子のように、混凝土を土台にして形のそろった石を張りつけたのであろう。丘の下から見上げるのだから、その全貌は展望出来ない。

新しい鳥居が立っていた。

幸太郎はすでに水屋で手を浄め、柵の入口にひざまずいて、両掌を合わせていた。私は鳥居の柱の割れ目に鼻を近づけ、何の材か確めようとした。しかし木の香はせず、防腐剤のにおいだけがただよった。栄介が幸太郎のかじかんだ背中に声をかけた。

「伯父さん。おれたち、正面で待っているよ」

幸太郎は姿勢をくずさず、返事もしなかった。私たちは今通って来た道を逆に、正門の方にそそくさと歩いた。その間栄介は黙々として、何も口をきかなかった。

正門傍の車の中で、青年は頭を座席にもたせて、うつらうつらと眠っていた。そこで私たちは遠慮して脇道に入り、粗末な木のベンチに腰をおろした。

「ああ。凧が!」

背伸びしたとたんに、青い空に凧が五つ六つ揚っているのを見た。