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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

幸太郎がやって来る度に、それをほのめかしたからである。幸太郎は栄介よりも、城介の活溌さを愛していたようである。事あるごとに幸太郎は子供の頭を撫でて言った。

「大学を出て、早くえらいやつになれよ。それにや勉強が第一だ」

頭を撫でられる回数は、栄介よりも城介の方がずっと多かった。

「そろそろ固まったようですな」

と医師は言った。

「もう大丈夫でしょう。剥がして見ましょう」

ぎしぎしときしみながら、ギプスが背中から剥がされた。ほっとした解放感が来た。彼はぎくしゃくと調子をととのえながら、起き直った。

「これ、二、三日陰干しにして下さい。すっかり固くなるまで」

剥がされたギプスを栄介は見た。背に当る部分が、思ったよりも深くえぐれ、ぐっと凹んでいた。背骨の型が点々としるされている。それを見た瞬間、かすかな衝動と戦慄が、彼の全身を通り抜けた。彼は思わずうめいた。

約束の日に、私は矢木栄介の家に行った。れいの無愛想な家政婦が招じ入れた。私は訊ねた。

「今、治療中かね?」

彼女は黙って首を振った。栄介は一昨日と同じ姿勢でベッドに横たわっていた。私は見舞いの花束を枕もとに置いてやった。