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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「ちょっと酔っぱらってるんだよ」
「今もさ、こんなこと、お前たちにゃ出来めえと、そんなつもりでやってんだ。あの与太学生ら!」
それは城介の邪推だと私は思った。彼は莨を地面に踏みにじり、のそりと立ち上った。本気でやるつもりだな。その時初めて判った。私はあわてて引きとめた。
「ほっときなよ、あんなの。殴ったって仕方がない」
彼は少時学生たちと吊橋の動きに眼を据えていた。私の手を振りはらって、いきなり斜面をかけ登った。
あっと言う間もなかった。二人は谷(と言っても三メートルほどのものだ)に突き落されて転落し、一人は腹を押えるようにしてうずくまった。橋の揺れがおさまるまで、城介は身構えたまま、三人の動きを監視している。女たちははげまし合うように、
「早く。早く!」
と呼び合いながら、雲か何かを踏むような足どりで、城介のいるたもとへ戻って来た。やはり烈しくゆすぶられて恐かったのであろう。するとあれは嬌声ではなく、今思うとほんとの悲鳴だったのかも知れない。転落した二人は服のほこりを払い、顔を見合わせながら、登っても一度闘おうかどうか、相談しているように見えた。しかし総じて彼等三人は、その動きからして、戦意を喪失していた。