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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

きっと初夏だったんだな」

「さっきは売店でおでんを売ってたと、そう言ったが」

「夏だって、おでんは売るさ。遊園地だもの。しかし――」

私は首をひねった。

「何だって城介君は、女の横面をたたいたんだろうな。たたく必要は何もないのに」

「次に会った時、訊ねてみなかったのかい?」

「うん」

「照れかくしだよ、あいつの」

鼻を鳴らすような発音をした。

「照れかくしって、何を彼は照れたんだね?」

「判らないかな。絹を裂くような女の悲鳴、かけ寄って見るとあわや落花狼藉――」

そして栄介は短い笑い声を立てた。

「やっつけてしまった後で、あいつは君という目撃者がいることに気付いたんだ。そこで城介はそれをごまかそうとしたんだよ。次に会った時、聞かなかったと言うのは、うそだろう」

「うん」

私は正直にうなずいた。

「聞いてみたら、惰性だと言って笑っていたね。しかしあの頃、僕たちは二十やそこらぐらいだろう。その年頃で、そんなことで照れるものかねえ」

「じゃ君はどう解釈するんだ?」

「よく判らないんだ。行動的だけれど、目的のない、盲目的な――」

私は言いよどんだ。

「まあ君がバスの階段を、がくがくがくとずっこけたようなもんだね。