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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

おそらく福次郎には、死んだ竜介のことが頭にあったのではないか。若い者を放って置くと、何を仕出かすか判らない。仕出かす前にきまりをつけて置かねばならぬ。その意識が福次郎に早急な手段を取らせたのだ。

しかし事態はそうかんたんには行かなかった。校長は言った。

「退学は認めます。認めますけれども――」

その校長は小心翼々たる男で、下積みから営々と成り上って来たせいで、保身のみを考えているような人物であった。地方の小中学の校長にしばしば見られるタイプである。こんな校長をいただく学校は、教師も生徒もおおむね生彩がない。教師たちはその校長のことを、キガネ校長とかげでは呼んでいた。視学や世間態に気がねばかりしているからだ。

「その退学願いを、あの事件以前の日付けにしていただけませんか」

キガネ派だけあって、言葉は丁重であったが、内容はそうでなかった。つまり城介を事件以前に退学させれば、うどんの食逃げの主犯はここの生徒ではなかったということになる。学校の名誉は傷つかない。福次郎は内心憤激したが、言葉はおだやかに断った。

「そういうことは出来ません。在学中にやったことですから、それに対して責任を取ろうと言うのです」