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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

丁度冬休みだし、下宿で正月を過すのも佗しいから」

令状にはただ、十二月某日下関に集合せよ、とあるだけで、どこの聯隊か部隊に入るのか、何も書いてなかった。空のスーツケースは城介の私服や私物を入れて帰るためのものである。栄介は大学生の制服姿で、城介は背広を着ていた。曇り日で、空は一面暗かった。

「寒いな。下関というところは」

「港街だからだろう」

城介は外套の襟を立てながら答えた。

「おや。雪だよ」

粉雪がちらちらと肩に落ちて来たが、すぐに止んだ。

指定の場所で手続きを取る間、栄介は近くの喫茶店に入り、あたたかいココアを注文した。丁度それを飲み終った時に、城介は急ぎ足で喫茶店に入って来た。腰をおろすなり小声で言った。

「やはり外地行きらしい」

「外地って、どこだ?」

「聞いたけど、教えて呉れなかった」

城介はタバコに火をつけた。マッチを持つ手がすこし慄えている。

「朝鮮か満洲だと思うんだがね。今晩はここ泊りで、明日乗船だ」

「兵舎に泊るのか」

「いや。民家だ。地図を書いてもらった」

そして城介はコーヒーを注文した。

「台湾だといいんだがねえ。おれ、寒さが一番にが手なんだ」