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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

それから盛り場と思われる方向に、二人は歩き出した。

先ずパチンコ屋に入って、パチンコをやった。という風に彼は覚えているけれども、パチンコが出来たのは戦後のことだから、戦後の記憶がそこに紛れ込んでいるらしい。あるいは遊技場みたいなところに入ったのか。

「兄貴。酒を飲もうじゃないか」

言い出したのは城介の方からだ。寒いので彼も飲みたかったのだが、城介の身柄を思って、辛抱していた。

「飲んでもいいのかい?」

「なぜ?」

「お前はもう兵隊なんだろう。酔っぱらうと叱られはしないか」

「まだ兵隊じゃないんだよ」

城介は笑った。

「明日船に乗っても、まだ兵隊じゃない。どこかに着いてから、正式に初年兵になるんだよ」

「ほんとかい」

「ほんとだ。さっきそう教えられた。まだ入隊してないんだから、一人前の兵隊面をするなって。今は何を飲み食いしても、おれの勝手なんだ」

一人前の兵隊面をするな、という言葉を、逆に解釈しているのではないか、と彼は思ったが、とめるわけにも行かなかった。で、そこらの居酒屋に入った。店内は鍋から立つ湯気などで、かなりあたたかかった。城介は鳥打帽子を脱ぎ、頭を撫でた。