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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「子供?」

城介は血走った眼で、ゆっくりとうなずいた。

同じ東京にいて、時々会っていたけれども、城介は今までそんなことを、一口も洩らさなかった。しかしそれが嘘でないことは、表情や口調ではっきりと判った。

「いくつになるんだ。その子は?」

「三月に生れる予定だ」

「結婚の約束をしたのか?」

城介は首を振った。

「じゃ妊娠させたまま、東京を離れたのかい?」

「そうだよ」

城介はにがそうに盃をあけた。

「結婚は出来ないんだ。その女は人妻なんだから」

「人妻? するとその子は、お前のかその亭主のか、どうして判る?」

「そうなんだ。しかし女はそう信じている。信じているからには、何か根拠があるんだろう」

城介は唇を歪めた。笑うつもりらしかったが、声にはならなかった。

「しかしこちらには根拠がない。絶対にないわけじゃないが、絶対にあるということもない。思えば父親なんて、あやふやなもんだな」

彼は黙っていた。黙って考えていた。

「たとえばおれたちだってさ、おふくろから生れたのは事実だ。しかしおやじのタネだとは、はっきり――」

城介の呂律は乱れた。

「言い切れないと思うよ。おれは時々そんなことを考えた。