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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

花も造花も同じようなもので、花は枯れるが、造花はいつまでも保つ、というのが城介の説明であった。

「どうだね?」

栄介は煙草に火をつけながら言った。

「加納の居所を探す件、承知して呉れるかね?」

「うん。ひとつやってみよう」

私は答えた。

「城介君が戦死をしたのは、いつのことだい?」

「戦死?」

栄介は表情を曇らせて、しばらく何か考えていた。

「昭和十七年の八月十七日だ。おれは大学を卒業して、就職していた」

「ああ。神田にある何とか研究所というところだったね。今はホテルになっている」

「うん。十七年一月、おれも召集を受けた。ところがおれは即日帰郷になった。気管支が悪くてね。二箇月ほど入院して、それからその年いっぱい、ぶらぶらしていた。その日もおれは魚釣りに出ていた。おれの家から海岸まで直ぐなんだ」

その日栄介は防波堤の突端で、釣糸を垂れていた。防波堤には二、三の釣客がいるだけである。太平洋戦争がすでに始まっていて、兵器生産に人手をうばわれ、釣りをする暇のある人間は、ほとんどいなくなっていた。

その日は、よく釣れた。雑魚類だけれど、午後三時頃までに五、六十匹は釣り上げた。