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げんかくさんぼう
玄鶴山房
一、二「中央公論 第四十二年第一号」1927(昭和2)年1月1日発行<br>三~六「中央公論 第四十二年第二号」1927(昭和2)年2月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,434 字 · 25 页
お鈴はこの田舎訛りにいつか彼女の心もちも或気安さを持ち出したのを感じた。同時に又襖一重向うに咳一つしずにいる母のお鳥に何か漠然とした不安も感じた。
「じゃ一週間位はいてくれられるの?」
「はい、こちら様さえお差支えございませんければ。」
「でも着換え位なくっちゃいけなかないの?」
「それは兄が夜分にでも届けると申しておりましたから。」
お芳はこう答えながら、退屈らしい文太郎に懐のキャラメルを出してやったりした。
「じゃお父さんにそう言って来ましょう。お父さんもすっかり弱ってしまってね。障子の方へ向っている耳だけ霜焼けが出来たりしているのよ。」
お鈴は長火鉢の前を離れる前に何となしに鉄瓶をかけ直した。
「お母さん。」
お鳥は何か返事をした。それはやっと彼女の声に目を醒ましたらしい粘り声だった。
「お母さん。お芳さんが見えましたよ。」
お鈴はほっとした気もちになり、お芳の顔を見ないように早速長火鉢の前を立ち上った。それから次の間を通りしなにもう一度「お芳さんが」と声をかけた。お鳥は横になったまま、夜着の襟に口もとを埋めていた。が、彼女を見上げると、目だけに微笑に近いものを浮かべ、「おや、まあ、よく早く」