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げんかくさんぼう
玄鶴山房
一、二「中央公論 第四十二年第一号」1927(昭和2)年1月1日発行<br>三~六「中央公論 第四十二年第二号」1927(昭和2)年2月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,434 字 · 25 页
しかしそれ以来三度に一度は水を持って行かなければならぬお鈴を見ることは愉快だった。従ってこう云う彼女には子供たちの喧嘩も不快ではなかった。彼女は玄鶴にはお芳親子に同情のあるらしい素振りを示した。同時に又お鳥にはお芳親子に悪意のあるらしい素振りを示した。それはたとい徐ろにもせよ、確実に効果を与えるものだった。
お芳が泊ってから一週間ほどの後、武夫は又文太郎と喧嘩をした。喧嘩は唯豚の尻っ尾は柿の蔕に似ているとか似ていないとか云うことから始まっていた。武夫は彼の勉強部屋の隅に、――玄関の隣の四畳半の隅にか細い文太郎を押しつけた上、さんざん打ったり蹴ったりした。そこへ丁度来合せたお芳は泣き声も出ない文太郎を抱き上げ、こう武夫をたしなめにかかった。
「坊ちゃん、弱いものいじめをなすってはいけません。」
それは内気な彼女には珍らしい棘のある言葉だった。武夫はお芳の権幕に驚き、今度は彼自身泣きながら、お鈴のいる茶の間へ逃げこもった。するとお鈴もかっとしたと見え、手ミシンの仕事をやりかけたまま、お芳親子のいる所へ無理八理に武夫を引きずって行った。
「お前が一体我儘なんです。