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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
徳田秋声『現代日本文学館8 徳田秋声』。同一底本的分册已合并为一书。收入:縮図、仮装人物。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 页
そういう人間の本妻の立場になって考えてごらん。」
若林は言うのであった。
「だから私たちは気晴らしの翫具だわ。」
「そう思うからいけないんだ。いつ僕がお前を翫具にしたと言うんだ。このくらい愛していれば沢山じゃないか。」
そのころ銀子は、箱崎町の本宅へ還る若林を送って、土州橋の交番の辺まで歩き、大抵そこで別れることにしていたが、交番の巡査も若林を見ると、お互いににっこりして挨拶するくらい、それは頻繁であった。
「お前はんそれじゃ情が薄いというもんやないか。あすこから一停留所も行けば、そこがわーさんのお宅や。送りましょうか送られましょうか、せめて貴方のお門までというどどいつの文句を、お前はんしりへんのか。」
とお神にいわれ、宅まで送ることにしたが、若林の女房が母の病気見舞でちょうど田舎へ帰っていたので、誰もいないから、ちょっと寄ってみないかと、若林が言うので、銀子も彼の家庭生活の雰囲気に触れたくはなかったが、ついて行ってみた。ここも通りに向いた方は、事務机や椅子がおいてあり、奥は六畳の茶の間と八畳の居間で、特に銀子の羨ましく思えたのは、文化的に出来ている台所と浴室であったが、二階にも父母の肖像のかかっている八畳の客間に、箪笥の並んでいる次ぎの間があり、物干もゆっくり取ってあった。