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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

徳田秋声『現代日本文学館8 徳田秋声』。同一底本的分册已合并为一书。收入:縮図、仮装人物。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 327,364 字 · 638 页

青空文庫

十五

翌日親爺の磯貝は、銀子をつれて本所へ出かけて行った。彼は肴屋に蠑螺を一籠誂え、銀子を促した。

「何しに行くのよ。私は昨日行って来たばかしよ。」

彼は剽軽な目を丸くした。

「あれーお前の話に行くのよ。おれ一人でも何だから一緒に行こう。」

銀子は渋くった。この裏通りに一軒手頃な貸屋があり、今は鉄道の運輸の方の人が入っているが、少し手入れをすれば店にもなる。それが立ち退き次第銀子の親たちを入れ、今一棟、横の路次から入れる奥にも、静かな庭つきの二階家が一軒あり、それも明けさせて銀子が入り、月々の仕送りもするから、それに決めようと、親爺は昨夜も言っていたのだった。

十五

裏の家があき、トラックで荷物が運ばれたのは五月の初めで、銀子が潰しの島田に姐さん冠りをして、自分の入る家の掃除をしていると、一緒に乗って来た父が、脚にゲートルなぞ捲きつけてやって来た。――あの時本所の家では銀子が二階で赤ん坊をあやしているうちに、下で親父が両親を丸めこみ、出来たことなら仕方がないから本人さえ承知ならと父は折れ、母も少しは有難がるのだった。千葉から少し山手へ入ったところに逆上に利く不動滝があり、そこへ詰めて通ったら、きっと頭が軽くなるだろうと親爺はそんなことも言っていた。