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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

であった。

進み進んで四挺の駕籠が、曠野から姿を消した時、白河戸郷の盆地の上の、丘の一所へ現われた。

そこから姿の消えた時には、盆地の坂を下っていた。

が、そうして四挺の駕籠が、白河戸郷へ到着するや、幾つかの事件が行なわれた。

衆を集める鐘の音が、回教寺院めいた建物から響くと、耕地からも往来からも家々からも、居酒屋からも、花園からも、大人や子供や男や女が、一度に鬨を上げて集まって来て、四挺の駕籠を取り巻いてしまった。

「誰だ誰だ! 何者だ!」

「神域へ無断で入って来た! 追い払ってしまえ! 虐殺してしまえ!」

「とにかく将監様へお知らせしろ!」

「どんな奴が駕籠に乗っているのだ! 駕籠の戸をあけて引きずり出せ!」

郷民達が声々に喚いた。

と、その時一人の老人が、幾人かの郷民に囲繞されて、四挺の駕籠の方へ近寄って来たが、

「拙者は白河戸将監でござる。白河戸郷の長でござる。何用あって参られたか?」

こう四挺の駕籠に向かって云った。

と、その声に応じて一挺の駕籠から、一ツ橋慶正卿が悠々と現われ、もう一挺の駕籠から碩寿翁が現われ、もう二挺の駕籠から老人と美女――他ならぬ刑部老人と、巫女の千賀子とが現われた。