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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

では次々に巫女の占いが適中しないとは云われない。

茅野雄は「何か」を手に入れるであろうか?

その「何か」とはどんなものであろう?

その翌日のことであったが、松倉屋勘右衛門の邸の中で一つの事件が起こっていた。

「お前は旦那様に憎まれているねえ」

「はい奥様、そんな様子で、私は心配でなりませぬ」

「妾がお前を贔屓にするからだよ」

「はい奥様、さようでございますとも」

「旦那様はお前を嫉妬ているのだよ」

「どうやらそのようなご様子に見えます」

「お前の縹緻がよいからだよ」

「奥様ありがとう存じます」

「妾がお前を贔屓にするのも、お前の縹緻がよいからだよ」

「奥様、お礼を申し上げます」

「それにお前は気も利いているよ」

「はい奥様、ありがたいことで」

「それに妾に忠実だよ」

「はいはいさようでござりますとも。私は奥様のお旨とならば、火の中であろうと水の中であろうと、飛び込んで行く意でござります」

「そうだよそうだよそういう性質だよ。だから贔屓にしてやるのだよ。でもそれは本当かしら? 妾がどのような無理を云っても、お前は聞いてくれるかしら?」

「聞きます段ではございません。きっと、きっと、きっと聞きます」