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ねむりにんぎょう
眠り人形
野村 胡堂
「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,770 字 · 16 页
その下に坐った母親、――見る影もなくやつれはてた母親――は、手に持って来た新聞紙の包を開いて、娘の方へ押しやりました。
「さあ、しっかりお食べなさい」
中には、おいしそうなおすしと、もう一つは菓子、明日のお米に困る人にしては、無分別な買物ですが、これには何かわけがあるのではないでしょうか。
母親は一目見たっきり一つもつまもうとはせず、涙ぐましい眼でじっと娘の食べるのを眺めておりました。
「お母様も召し上れな、このおすしは、それはおいしいのよ、こんな御馳走はずいぶん久しぶりねエ」
「しっかりおあがりよ、私はどうしたものかちっとも欲しくない」
「どうしたんでしょうね」
「多分、おなかが悪いんでしょう――それはそうと、お母様はこんなに身体が弱いし、何時どんな事があるかわからない、若し万一の事があったら、よしちゃんは、下の小父さんに頼んで、何処かに奉公にでも出してもらって、気長にお父様の行方を探しておくれよ」
「いやいや、そんな事を言っちゃ」
「でも、一応は言って置かないと気になります、なまじっか私というものが無ければ、下の小父さんはじめ、遠い親類達も、世間の人も、かえってよしちゃんに目をかけてくれるでしょう、私はもう、――私はもう生きている力も根もない――」