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ねむりにんぎょう

眠り人形

野村 胡堂

「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,770 字 · 16 页

青空文庫

二

「叔父さん、この人形にしましょうよ、ネ叔父さん」

加奈子は若い叔父さんの外套にすがりついて、もう鼻を鳴らさないばかりです。

「そこで値段は?」

「十円頂きます」

「なに十円? 少し高くはないかネ」

「いえ、決してお高いことは申しません、新しいとどうしても五十円より下ではお求めになられない品で、それに出も確かですから、古と申しても決してお心持の悪い品ではございません――」

二

古道具屋のおやじさんはフト後ろを振り向いて、街路樹の下に額を突き合せて涙にふけっている可愛そうな母子の方を眺めやりながら、ためらいがちに言葉をつぎました。

「こんな事は申し上げていいかどうかわかりませんが――この人形ばかりは、一銭も私は口銭を頂きません、十円に売れば十円、そのままそっくり、此処におる二人の方へお渡しするのです」

不思議な古道具屋の言葉に、若い紳士は思わず好奇の眼を見はりました。

「というのは、こうしたわけです。この方の御つれ合いが十年間もアメリカで働いて、たいそうお金を貯めたそうで、つい三ヶ月ばかり前に、そのお金を持って不意に帰って来られたのです。十年間音信不通にしていたのにも、いろいろわけがあるそうですが、とにかく母娘の喜びは申すまでもありません、横浜まで出迎えて、久しぶりの父なり夫なりに逢った二人は、天にも昇る心地で、三人一緒