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ねむりにんぎょう
眠り人形
野村 胡堂
「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,770 字 · 16 页
四
と三人一と塊りになって、恐ろしく急な梯子を二階へかけ上ると、
「アッ」
何があったんでしょう、三人は思わず梯子段の上に立ちすくんで顔を見合せました。
四
話は少し前に戻ります。
人形が売れて、思わぬお金が手に入った貧しい母親と娘のよし子は、一と足先に竜泉寺町の古道具屋さんの二階に帰りました。
古道具屋さんも随分貧しい暮しでしたが、よし子とその母親の暮し向は、とてもお話にもなんにもなりません、建てつけの悪い六畳ほどの部屋の中にある物と言っては、鉢巻をした七輪と、口の欠けた土瓶が一つずつ、はげちょろのお盆が一枚と、茶碗が二つ三つ、それだけ、あとはなんにも無いのです。
この寒空に、炭のかけらが一つ無いのは先ずいいとして、押入をあけても、その中には今着て寝る布団さえもなかったのです。
貧乏にもいろいろありますが、世の中にはこれほどドン底に落ちこんだ貧乏があるでしょうか。十年越しの女世帯にさいなまれた上、一寸横浜で逢ったばかりの父親を探すために、何もかもほうり出して、本当に母子共双子縞の袷一枚になってしまったのです。
それでも十燭の電灯が一つ、宿主の古道具屋の好意で、この貧しい部屋を照しております。