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ねむりにんぎょう
眠り人形
野村 胡堂
「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,770 字 · 16 页
ましたが、その鞄というのは、御主人が横浜へ上陸した時持っていた品で、中には、手廻りの道具が少しばかり、それに、この人形が一つ入っていたのだそうです。さっそく警察へ届け出ると、警察の方も非常な意気込で、新しくまたさがして下さいましたが、矢張り雲をつかむようで、御主人の行方は手がかりもありません。その内に母子の方は貯金をすっかり無くして、その日の暮しにも困るようになり、僅かの知合をたどって、私共の二階に同居されたのはツイ一と月ばかり前の事です、私が古道具屋をしているところから、持っている品を一つずつ売って上げては、ようやくその日その日をしのいでいますが、一つ一つ主人の形見の品が無くなるのは、身を切るより辛いと言っています。これもまたいたし方がございません。せめて私の露店に、御主人の持物が並んでいる間、母子二人で此処に出て来て、もしや、この品を見知っている方があって、それから御主人の行方の手がかりでも見つからないものでもないと、頼みにならない事を頼みにして、こう毎晩お二人で出ていられるので、御主人の形見の品を買われる方がある毎に、私からこの話を申し上げて、念のためにお尋ねしているのです、――もしや貴方は『松沢彦次郎』