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ねむりにんぎょう

眠り人形

野村 胡堂

「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,770 字 · 16 页

青空文庫

「まあ、立派なお人形ですこと、叔父さんによくお礼を申し上げて?」

加奈子の抱き上げた人形の見事さに、母親も思わず目を見張りました。亜麻色の毛を房々と下げて、淡紅色の絹服を着たママー人形の可愛らしさは、誰でもほほ笑まずにはいられません。

「それがね姉さん、大道の古道具屋で買ったんですよ、おまけに十円というのを、加奈ちゃんのお声掛りで、二十円に買わされたんだから世話はない」

「まあ」

優しい母親は、二の句がつげないという様子で、娘のふところにかいいだかれている、見事な人形を眺めました。が、フト気がついた様子で、

「加奈子さん、一寸そのお人形さんをお見せなさいな、少し眼が小さいようだが、私の心持かしら」

母親は手をさしのべましたが、思い直した様子で弟香椎六郎の顔を見ました。いかに真実の弟でも、折角娘に買ってくれたお年玉に、けちをつけては済まないと思ったのでしょう。

「姉さん、私もそれに気がついていたんだ、眠り人形だから、寝かしてる時眼をつぶってるに不思議はないが、起しても半眼に眼を閉じているのはおかしい。こんな人形はたいてい起すと大き過ぎるほど大きい眼をパッチリ見開くものだが――」