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がらすどのうち

硝子戸の中

夏目 漱石

夏目漱石把自己关在玻璃门后养病,外界只剩单调风景,却总有不速之客闯进来,讲些意想不到的故事。跟着他一起观察这些闲散又生动的瞬间吧。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,702 字 · 105 页

青空文庫

三十五

〕

三十五

私は小供の時分よく日本橋の瀬戸物町にある伊勢本という寄席へ講釈を聴きに行った。今の三越の向側にいつでも昼席の看板がかかっていて、その角を曲ると、寄席はつい小半町行くか行かない右手にあったのである。

この席は夜になると、色物だけしかかけないので、私は昼よりほかに足を踏み込んだ事がなかったけれども、席数からいうと一番多く通った所のように思われる。当時私のいた家は無論高田の馬場の下ではなかった。しかしいくら地理の便が好かったからと云って、どうしてあんなに講釈を聴きに行く時間が私にあったものか、今考えるとむしろ不思議なくらいである。

これも今からふり返って遠い過去を眺めるせいでもあろうが、そこは寄席としてはむしろ上品な気分を客に起させるようにできていた。高座の右側には帳場格子のような仕切を二方に立て廻して、その中に定連の席が設けてあった。それから高座の後が縁側で、その先がまた庭になっていた。庭には梅の古木が斜めに井桁の上に突き出たりして、窮屈な感じのしないほどの大空が、縁から仰がれるくらいに余分の地面を取り込んでいた。その庭を東に受けて離れ座敷のような建物も見えた。