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つぶてしんじゅう
礫心中
野村 胡堂
「富士」1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,190 字 · 28 页
中に挟んだ手焙りが一つ、横から照す絹行灯に、知らない者には、わけある仲とも見えたでしょう。
「それでは、御前様、好き好んで、こんな御政道の手伝いを遊ばしたわけじゃ無いと仰しゃるので――」
「そうとも、その通りだよ、――誰が好きでこんな非道なことをするものか、みんな上からの指図で、嫌々乍ら、お上の手足になったのだ、下々の怨の声を聞く時の辛さ切なさ、この胸がよくも張り裂けない事であったと思うよ」
鳥居甲斐はホッと吐息を洩らしました。
「…………」
「私も、鬼でも蛇でもない、――現にお前の姉が死んだ時も、何遍この頭を下げて、詫に行こうと思ったことか、――役目の手前それも出来ない苦しさを考えてくれ、その代り、この後はどんな力にもなってやろう、昔の増田屋に返す由はなくとも、お前の身はきっと立つようにしてやる」
「それでは、私は誰を怨めば宜いのでしょう」
お豊の胸には、何も彼も天とう様のせいにして、情死しようと言い出した要次郎のおもかげが浮びます。
「高い声では言われぬが、――この御改革の元は御老中の水野越前守様じゃ。俺はその指図通りに動く人形も同様」
「…………」
お豊の眼には、また活々とした復讐の熱意が燃えます。