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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页
それに寒いから、手を洗うにも湯を使うのだし、資金のいらない湯でもたくさん飲んで体を暖めようという者達が何しろ十人近くいるのだから、たった一度の往復では足りようもない。
寒さで真青になりながら、禰宜様宮田が二度目に川から帰って来ると、もう仲間共は木片を集めてボンボン焚火をし、暖かそうに眼白押しをしている。
「爺さん、お待ちかねだぞ!」
かじかんだ指で茶釜をかける。
そして、彼等の中では一番年長者である彼が、皆の背のかげから、僅かの暖みをとるのである。
膝を抱えて小さくうずくまっている禰宜様宮田は、うっとりと、塵くさい大きな肩と肩の間からチロチロと美しく燃える火を見ながら、あてどもない考えに耽るのが常であった。
けれども、このごろでは何を考えてもお仕舞いまではまとまらず、またまとめようという意志もない。
ただ、ジイッと静かにしていたいのである。
誰に何を云われても辛棒してするのは、自分で守っている静かな心持を、口小言や罵りで打ちこわされるのが厭だということも、主な原因になっている。
他人の云うことも聞えないことの方が多かったりして、彼は我ながら、はあ呆けて来たわえと思うことなどもあった。