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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

苦しい生活に疲れた彼の心は、ひたすら安静を望んでいるのである。もう激しい世の中から隠遁してしまいたくなっているのである。

けれども、そうは出来ない彼は、また自分の心がそれを望んでいるのだとは気づかない彼は、老耄が、もう来たと思った。が、それを拒むほど、彼は若くていたくもなかったのである。

心がいつもいつも何かどんよりした、厚みのある霧のようなもので包まれていて、外から来るいろいろな刺戟は皆そこに溜って、しんまで滲み通らない。

そして、そのどんよりしたものの奥には、大変深い寂しさにしっかりと包み込まれて、いかにもトロリとした露の雫のように、色という色もなければ、薫りという薫りもない、ただあるということだけの感じられるようなものが潜んでいる。

折々彼の心と体とは、すっかりその透明な、トロリとしたものに吸いこまれてしまって、何も思わず何も聞かず、自分が今ここにこうやっていることさえ知らなくなることなどがありありしたのである。

毎日毎日仕事ははかどって行った。

そして、もう二三日であちら側から掘って来た新道と、こちら側から掘って行った道とが、立派に合おうという日である。