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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页
そのいくさへ、正行もお供させてくださいませ」
「まあ待て」
と、正成は子の一途を、いささか持てあまして。
「男の子の初陣とは、元服以上大事な日だ。初めて烈しい世へ出て、世の大敵と渡りあうこと。――悔いのない相手と正義の戦場をえらばねばならん」
「今のいくさは正義ではないのですか」
「さてさて、そちもなかなか口賢しゅうなって来たな。人はたれも正しからんとし、正しいと号しているのだ。みずから邪悪の軍と思っている者はいない。……だがそれがまま邪軍となり魔行をほしいままにし出してくる。大本は忘れやすく、人は大昔の獣に返りやすい。いくさとはそんなものなのだ」
「…………」
「いや、こんな話、まだそちには、ちと難しかろ。とまれこの父はの、元来が今様の武人でないのじゃ。それゆえ、ただ功名我慾の首狩りのような戦に、わが子のそちを初陣させる気にはならぬ。……連れてゆくときがあれば、そのときは連れてゆく。……かまえて、それまではただ学問に精出しておれ」
「はい」
正行はききわけた。これ以上は、叱られることを知っている。また叱言となればきびしいことも知りすぎていた。
正行がここにいたのは、わずか三日ほどだった。