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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页

青空文庫

……あとで」

正成はすぐよりたかって来る子たちを、卯木にあずけた。そして爺から留守中の報告をうけ、さてようやく、久子とふたりきりになったところでふと訊ねた。

「門前に見えた大勢の雑人たちは、いったい何か」

「石川あたりの散所民たちだそうでございます」

「散所の者か」

「はい。あの衆たちは、おやかた様が朝廷のおとがめで引きこもったのか、さもなくば御病気かと、巷の噂を案じ合って、相談のすえ、お見舞にうかがったものと申しておりました」

「すまんな。それはすまん。正成はこのとおり病気でも何でもない」

「ですが、何であれ、おなぐさみになればうれしいとか申しまして、干魚、干肉、菓子、酒などたくさんに持ち、中でも散所の芸人たちは、ぜひ、自分たちの芸をお慰みにいれたいと、あのように、いくら爺に諭させても、帰らないので、ほうッてあるのでございます」

「それは悪い」

正成は言った。

「散所の民は、ゆらい領主も何もないはずの者。それがああして、せっかく自分らの代表をたて、わしの慰めにとこれへよこしたのに、むげに断るのは心ないことだ。長屋へ入れて、あすはその衆の芸を見ようと、爺からいわせておくがよい」