轻松读懂日语经典作品
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あきのかご
秋の駕籠
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页
六助は眼をすぼめて、まじめな口ぶりで云った、「しょうばいは石工だったが、石工としても土地では腕っこきといわれたものなんだが、ずいぶんいろいろな本を読んで、……親父は字もうまかった、神主の丹波さまも甲をぬぐくらい、親父はもの識りで頭がよかった、どうかして死ぬまでに本を一冊書きてえ、と云った、どうしても書くんだと云ってた、そのことでいつも頭がいっぱいだったらしい、絶えず癇癪を起こしたり酔っぱらったりしていたもんだ、三十五の年に、胃が破けて死んじまったが……」
「じゃあ本は書かなかったのね」
「書かなかったよ」
「いったいどんな本を書くつもりだったの」
「それがさ」六助は両手で盃を包んだ、「なにを書くつもりだったか、誰にもわからなかったが、親父は酔っぱらうといつもこう云ってた、書きたいことはここ――自分の額を指で敲くんだ……ここに詰っている、いっぱい詰っているんだ、紙と筆と暇さえあれば書けるんだ、なにを書くのかって、ふん、おめえたちの知ったことじゃあねえさ、こう云ってた……ときによると、神主の丹波さまもなにかしら古い事を聞きに来るくらいだったが、親父の云うことにはいつも感心してた、ただ一つだけ、神や仏などというものもない、ということだけは承知しなかったがね」