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びじんたかじょう
美人鷹匠
大倉 燁子
「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页
その時、ふと頭に浮んだのは達也様のことでした。死んだのは自分の児ではない、ほんとの児は生きている、この世にまだ生きているんだ、現に、男爵令息として学習院に通っているではないか、と、思うともう一刻も我慢が出来なくなり、その時からお屋敷の附近を彷徨き始めました。何日目かでやっと若様にお目にかかれました、それはランドセルを背負った学校帰りの可愛いいお姿でした、飛び付きたいような心をジッとおさえ、甦ったような喜びに胸を跳らせながら花はお顔を見詰めて居りました。が、もう只今の花は、遠くからお姿を見て満足しているだけでは我慢が出来なくなりました、自分の児を他人様の児として眺めている気にはなれなくなりました。若様、いや、達也様は花の児でございます、花の児です。花は自分の児をぎゅッと抱きしめたくなりました、抱きしめて、抱きしめて、離したくない、もう誰にもやるのはいやです。
どうぞ、旦那様、花の児をお返し下さいませ、私の申すことが嘘だと恩召すなら、証拠をあげてみましょう。
達也様には腋の下に小指の先で突いたほどの赤痣がある、花と同じように下唇に黒子もあるはずです、しかし、それ等は外から見てわかる事で、云いがかりだと仰しゃられてはそれまでですが、体質の遺伝については争うことが出来ないだろうと存じます。