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びじんたかじょう
美人鷹匠
大倉 燁子
「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页
小夜子はもうそれ以上読み続ける勇気がなかった、思いがけないこの手紙は、彼女の心を真暗にしてしまった。
花という小間使のいたことは記憶している、緋桃の花のような可憐な美少女だった、その少女がいるために御用聴きの若者達が台所口を離れなくて困る、と、醜い顔の他の女中が度々訴えたことも覚えている。十七にしては少しませていたが、気の利いた賢い娘だったので彼女も愛していたが、夫にも大変気に入っていた。小夜子は悪阻のあとの衰弱がひどかったので、暫時箱根の別荘に静養していたその留守の間に、花は暇をとって帰ってしまった、どういう理由で帰ったのか、別に詮議立てもしなかったので、それについては何も知らなかった。
小夜子は今の今まで、あの謹厳な夫がこんな醜い半面を持っていようとは夢にも思わなかった。刑務所から来たものだから囚人の手紙に違いない。事によると、これは夫の弁護に不満を懐いた女の捏造で、家庭の平和を破壊してやろうという蛇のような復讐かも知れない、うっかり乗ってはそれこそ物笑いだと、心で打ち消すあとから、あるいは――とまた疑う心が頭を持ち上げて来る。
半信半疑だが、全然無根だとも思えない、それが小夜子の心を憂鬱にさせる。