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たいない
胎内
三好 十郎
「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页
花岡 そう思って、どうして生きておれる?
佐山の声 フフ、まったくだ。どうして生きておれるんだろうなあ?
花岡 君あ、しかし、強いから――
佐山の声 強い? 俺が?……ヘヘ、そんなことあないよ。ただ君あ慾張りだし、俺あ、はじめっから、なんの望みも持っていないからだよ。人間は、一人ずつ一人ずつで苦しむために生まれて来たんだ。そんだけだよ。
花岡 そんな、そんな――じゃけんなこというなよ。ね! 俺あ、たまらないんだ! なんでもいいから、俺あ、この、なにかを信じて――(這いずって左手へ行きかける)
佐山の声 寄って来るな! イヤだ、俺あ! 離れていろ!
花岡 いいじゃないか。一人でこうしていると、寂しくって寂しくって、たまらない! こうしてあやまっているんだから、俺をそんなに嫌わなくたって――
佐山の声 君だけじゃない、みんなイヤだ! 来るなといったら、来るな。近寄って来ると、殺すぞ! (低いが、しかしホントの殺気のこもった語気に、花岡は這い寄るのをやめて、佐山の声の方をうかがっていたが、やがて、ガンドウを動かして、そちらを照らし出す。ガンドウの円光がチラチラと壁の上を這った末に、左手の隅の最初の位置に、ペタンとあおむけに寝た佐山の姿をとらえる。