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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

愛だとかね、神さまだとか、そいったもんだ。買えん買えん、わかってるよ、そいつは。しかし、こんでまた、世の中のたいがいのものはゼニで買える。こいつも真理だ。だろう? その買えるものを一杯積み上げて見ろ。そいつが神さまになったり愛になったりするよ。量的変化が質的変化をひきおこす。え? なんだっけこいつは? まあ、いいや、なんでも。だからさ、いいじゃないか、わかってるよ。どうだい、ゼニをやろうか? おい! ほしくないのか?

佐山 ……ほしくないことはないんですけど――でも――

花岡 よし来た――取っときな、じゃ! (ボストン・バッグを引きよせてサッと開き、その中にハダカで詰めこんである一万円のサツタバを三つばかり掴み出して、水たまりのそばの地めんにほうり出す)ほらよ!

村子 なにをすんのよ、あんた!

花岡 いいじゃねえか! (佐山に)なあおい、それやるよ。とっとけ。……お前はおれたちが誰だってことを、すこしばかり知っちまった。俺たちがここを出ていったら、どうだお前、すぐに土地のケイサツにでもつっ走って行って、いいつけるか? ヘヘ、そうしたきゃ、そうして見るか? どうだい? なあに、金あ取っておけ。