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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

花岡 そりゃ、しめたよ、俺が。しめたけど、誰がお前こんな――だからよ……ちきしょう! お前の、その――軽蔑か? 軽蔑するんだな?

佐山 そんなこたあないですよ。

花岡 したきゃ、しろ。そいで、君もいっしょに生き埋めになるんだ。そうなりたけりゃ、いくらでも笑っていろ。

佐山 だから、僕だって、こうして、いっしょうけんめいに掘ってるじゃありませんか。

花岡 んだからよ――チッ! とにかくお前、金は取ったんだぜ。

佐山 金?……(ポカンと口を開いて花岡の顔を見ていたが、やがてわれに返って、よごれた上衣のポケットからサツタバを引き出して、それを見る。どうしてそれを自分が持っているのか、またそれにどんな意味があるのか、わけがわからなくなっている)

花岡 いやさ、金はとにかくとしてだよ、とにかくお前――こいで、ヘタをすると、なんだぜ、このまま、おれたちあ――

佐山 このまま――?……(いぶかしそうな顔をして花岡を見る。つぎに村子に目を移す。村子は白い無表情な顔で佐山の方を見ている。……佐山ヒョイと立ちあがる。ノロノロと歩きだして、七八歩右の方へ行き、立ちどまって、入口の方に目をやってから、そのへんの壁や天井を見まわす。