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はなのきむらとぬすびとたち

花のき村と盗人たち

新美 南吉

「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,710 字 · 20 页

青空文庫

これは、ずっとまえから火つけや盗人をして来たほんとうの盗人でありました。

「わしも昨日までは、ひとりぼっちの盗人であったが、今日は、はじめて盗人の親方というものになってしまった。だが、親方になって見ると、これはなかなかいいもんだわい。仕事は弟子どもがして来てくれるから、こうして寝ころんで待っておればいいわけである。」

とかしらは、することがないので、そんなつまらないひとりごとをいってみたりしていました。

やがて弟子の釜右ヱ門が戻って来ました。

「おかしら、おかしら。」

かしらは、ぴょこんとあざみの花のそばから体を起こしました。

「えいくそッ、びっくりした。おかしらなどと呼ぶんじゃねえ、魚の頭のように聞こえるじゃねえか。ただかしらといえ。」

盗人になりたての弟子は、

「まことに相すみません。」

とあやまりました。

「どうだ、村の中の様子は。」

とかしらがききました。

「へえ、すばらしいですよ、かしら。ありました、ありました。」

「何が。」

「大きい家がありましてね、そこの飯炊き釜は、まず三斗ぐらいは炊ける大釜でした。あれはえらい銭になります。それから、お寺に吊ってあった鐘も、なかなか大きなもので、あれをつぶせば、まず茶釜が五十はできます。