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はなのきむらとぬすびとたち
花のき村と盗人たち
「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,710 字 · 20 页
三
」
そういってかしらは、仔牛のぶちの背中をなでていました。まだ眼から涙が出ていました。
そこへ四人の弟子がいっしょに帰って来ました。
三
「かしら、ただいま戻りました。おや、この仔牛はどうしたのですか。ははア、やっぱりかしらはただの盗人じゃない。おれたちが村を探りにいっていたあいだに、もうひと仕事しちゃったのだね。」
釜右ヱ門が仔牛を見ていいました。かしらは涙にぬれた顔を見られまいとして横をむいたまま、
「うむ、そういってきさまたちに自慢しようと思っていたんだが、じつはそうじゃねえのだ。これにはわけがあるのだ。」
といいました。
「おや、かしら、涙……じゃございませんか。」
と海老之丞が声を落としてききました。
「この、涙てものは、出はじめると出るもんだな。」
といって、かしらは袖で眼をこすりました。
「かしら、喜んで下せえ、こんどこそは、おれたち四人、しっかり盗人根性になって探って参りました。釜右ヱ門は金の茶釜のある家を五軒見とどけますし、海老之丞は、五つの土蔵の錠をよくしらべて、曲がった釘一本であけられることをたしかめますし、大工のあッしは、この鋸で難なく切れる家尻を五つ見て来ましたし、角兵ヱは角兵ヱでまた、足駄ばきで跳び越えられる塀を五つ見て来ました。