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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

さぞ退屈だろ」

「あまり月がいいから、ぶらぶら来ました」

「いい月じゃな」と障子をあける。飛び石が二つ、松一本のほかには何もない、平庭の向うは、すぐ懸崖と見えて、眼の下に朧夜の海がたちまちに開ける。急に気が大きくなったような心持である。漁火がここ、かしこに、ちらついて、遥かの末は空に入って、星に化けるつもりだろう。

「これはいい景色。和尚さん、障子をしめているのはもったいないじゃありませんか」

「そうよ。しかし毎晩見ているからな」

「何晩見てもいいですよ、この景色は。私なら寝ずに見ています」

「ハハハハ。もっともあなたは画工だから、わしとは少し違うて」

「和尚さんだって、うつくしいと思ってるうちは画工でさあ」

「なるほどそれもそうじゃろ。わしも達磨の画ぐらいはこれで、かくがの。そら、ここに掛けてある、この軸は先代がかかれたのじゃが、なかなかようかいとる」

なるほど達磨の画が小さい床に掛っている。しかし画としてはすこぶるまずいものだ。ただ俗気がない。拙を蔽おうと力めているところが一つもない。無邪気な画だ。この先代もやはりこの画のような構わない人であったんだろう。

「無邪気な画ですね」