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なおこ

菜穂子

堀 辰雄

楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页

青空文庫

そうして私はお前自身にもよく分らないらしかった、あの時の羞かしさとも怒りともつかないものの原因をそれ以上知ろうとはしなかった。

それから数日後、東京から電報が来て、征雄が腸カタルを起して寝こんでいるから、誰か一人帰ってくれというので、とりあえずお前だけが帰京した。お前の出発したあとへ、森さんからお手紙が来た。

先日はいろいろ有難うございました。

O村は私もたいへん好きになりました。私もああいうところに隠遁できたらと柄にないことまで考えています。然しこの頃の気もちは却って再び二十四五になったような、何やら訣の分らぬ興奮を感じている位です。

殊にあの村はずれで御一緒に美しい虹を仰いだときは、本当にこれまで何やら行き詰まっていたようで暗澹としていた私の気もちも急に開けだしたような気がしました。これは全くあなたのお陰だと思って居ります。あの折、私は或る自叙伝風な小説のヒントをまで得ました。

明日、私は帰京いたす積りですが、いずれ又、お目にかかってゆっくりお話したいと思います。数日前お嬢さんがお見えになりましたが、私の知らない間に、お帰りになっていました。