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おちばのとなり

落葉の隣り

山本 周五郎

「小説新潮」1959(昭和34)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,877 字 · 57 页

青空文庫

――彼はおひさと参吉が抱き合っているのを見たのだ。勝手口の外にある薪小屋の前で、背の高い参吉が上から跼むようにし、おひさは背伸びをして、両方でお互いの躯を抱き緊め、そして唇を合わせていた。それはけんめいな、ひたむきな姿で、勝手口へ繁次の出て来た物音にも、まったく気づかないようであった。

おひさは「指定」の女中をしていた。父親がなにをするかわからないので、繁次が親方夫婦に話したところ、三人いる女中の一人に嫁の話があり、その代りを捜していたところだそうで、すぐに相談がきまった。差配の武助がおひさの父と「指定」の親方とのあいだに立って、おひさの身売りなどはしない、という証文を入れ、年期七年で五両という金を貸した。受人はむろん武助で、残った増吉は繁次の母が世話をすることになった。

それから足かけ三年、おひさも十四歳になるが、店でいっしょにくらし始めてから、繁次はいつもおひさに気をつけ、ほかの女中や職人たちにいじめられたり、わるさをされたりしないように庇ってやった。

――出しゃばるんじゃあねえぜ。

無用に気をきかせたり、才ばしったふうをしないほうがいい。あの子はまがぬけている、と云われるくらいのほうが朋輩から憎まれずに済む。